昨夏、ついに第1回全国高校教育模擬国連大会開かれました。この大会は模擬国連プログラムを学校活動に導入することによって得られる教育効果やその導入方法を研鑽する教員の任意団体である全国中高教育模擬国連研究会（全模研）がユネスコアジア文化センター（ACCU）と共に実践の場として生徒に提供できる模擬国連大会の企画運営を担おうと主催するものです。「教育」の名が冠されているのは、初心者でも参加できる敷居の低さとともに、実行委員を高校生自らが担うことによって生徒の人間的な成長を目指す大会にしたいという思いからです。 昨年に続いて今夏に第2回大会を開催することになりましたが、主催者を代表して誠に僭越ながら私が考える模擬国連の教育効果について、大きく分けて３つの点について簡単に述べさせていただきます。
 1点目は「積極的な発言力、交渉力の涵養」です。模擬国連の場はあくまで会議であるので、自分が発言しなければ何も始まりません。"lobbying"や"caucus"といった場面でも積極的に自らが他国大使に話しかけていかなければ、何もすることがなくなってしまい、いわゆる会議難民となります。参加大使としての会議の最大の目的は、自国の利益を最大化することですが、何も独りよがりの自己主張を繰り返せば良いわけでもありません。相手をも納得させながら自分たち自身が満足するレゾを創り上げることがキモになります。言い換えればコミュニケーション力を土台にした戦略力も試されます。

 2点目は「国際問題への深い関心の醸成とリサーチ力の鍛錬」です。模擬国連で扱う議題は現代世界を覆う様々な社会問題についてです。少なくても国内であまり話題になっていないような国際問題であっても、目を向けていかなければならないのは当然で、模擬国連に参加することによってそのような問題について真摯に考える動機付けとなります。また議題を扱う際に関心を持っているだけでは議論になりません。担当国の状況なり政策なりをありとあらゆる側面から調査しなければなりません。

 そして3点目が「英語学習へのモチベーションの向上」です。模擬国連の世界では共通言語は英語になります。海外の模擬国連では世界中の若者相手に国連と名の付いた舞台で交渉を挑むため英語力は必須です。そのような大会において、仮に現在の英語力が心細くとも、それらの生徒に刺激を受け、モチベーションが上がることは容易ですし、上のレベルの大会では英語力を高めなければ会議自体に参加できないのです。以上のように、模擬国連活動では学び、発信し、調整を図るという動作を繰り返さなければなりません。
昨今、教育界ではアクティブラーニング（AL）の嵐が吹き荒れています。ALが主体的な深い学びとされるなら、模擬国連活動はまさにALといえるのではないでしょうか。全模研の先生方からは「究極のAL」である、という声も聞かれます。それは模擬国連活動が1つの目的を持つだけでなく、上述したような全方位的な教育効果を持っているからだと思われます。
 日本人の国際貢献のあり方が問われているこの時代に、これら模擬国連活動によって少しでも国際舞台で活躍できる人材の育成に務めることができるのなら、これほど最適な実践プログラムは他にはないと言っても過言ではありません。
 ぜひ、「高校生の高校生による高校生のための模擬国連大会」のキャッチフレーズのもと、全国の高校生が集い、切磋琢磨する全国高校教育模擬国連大会にご参加下さい！